生活文化学コースの卒業生は様々な進路の人がいます。民間企業は、金融・情報・流通・運輸・製造等多岐にわたっているのが特徴です。公務員関係では,中央・地方問わず例年一定数の就職があります。大学院に進学する人もいます。進路未決定の人がほとんどいないことも特徴です。

取得できる資格

  • 中学校教諭一種免許状(家庭)
  • 学校図書館司書教諭
  • 学芸員
  • 社会福祉主事(任用資格)

主な進学・就職先

進学(大学院)奈良女子大学大学院、京都大学大学院
 ☆奈良女子大学大学院には6年一貫教育プログラムに基づく特別選抜制度があります。
就職(官公庁)名古屋税関、大阪労働局、名古屋法務局、奈良県、奈良市、東京都、京都府、兵庫県、和歌山県
就職(企業等)(株)村田製作所、オリックス生命保険(株)、富士通(株)、ナカバヤシ(株)、(株)フェリシモ、(株)ニトリ、(株)NTTデータMSE、(株)カインズ、加和太建設(株)、京都清水メディケアシステム、近畿車輌(株)、(株)近鉄百貨店、佐藤工業(株)、(株)SCRAP、積水メディカル(株)、セコム(株)、大日本住友製薬(株)、(株)富山第一銀行、きのくに信用金庫、日通・NPロジスティクス(株)、(株)パソナグループ、パナソニックエコシステムズ(株)、フジ住宅(株)、(株)BEARTAIL、(株)ユニフィット、全国健康保険協会、東京都福祉保健財団、兵庫県社会福祉協議会

OGメッセージ

内閣府 井出美香さん

内閣府に勤務しています。入府1年目のとき、チリで開かれた国際会議に参加しました。各国の外交官は、女性も男性もジェンダー平等のことをよく考えており、さらに、普通に議論ができました。防災分野では、自治体がジェンダー視点からの災害対応を行うためのガイドラインを作成したり、令和2年7月豪雨の防災大臣視察に随行し、ジェンダー視点で被災地のニーズを汲み取り、支援につなげたりしました。

ジェンダー論はもちろん、法律の知識、社会調査の方法、少人数の演習で鍛えられた経験など、奈良女で得た力を日々の業務で使わない日はありません。ジェンダー平等は国際社会で共有されている規範です。

SDGsにおいても、Goal5だけでなく、本文において「ジェンダー平等との実現と女性・女の子のエンパワーメントは、すべての目標とターゲットにおける進展において死活的に重要な貢献をするものである。」とされています。男女共同参画社会の実現のためには、今の世代の頑張りに加えて、これからの社会を作っていく若者の力が重要です。

後輩の皆さんには、生活文化学コースで様々なことを吸収し、奈良から世界へ大きく羽ばたいてほしいと思います。

奈良女子大学大学院 博士前期課程 河野夏生さん

私は現在、奈良女子大学の大学院でジェンダー論、身体論、表象論を中心に研究しています。生活文化学科(現コース)の学部生として学ぶ中で深めたい研究テーマが見つかり、研究者になるために進学しました。

生活文化という名前の通り、このコースでは私たちの生活や文化に根ざした問題を科学的に研究する、人文社会学系の分野について幅広く学ぶことができます。様々な分野に触れることで、新たな視点や課題に対する多数のアプローチ方法を知ることができます。私自身この学科で学ぶなかで、日常の習慣や社会規範といった、これまで「当たり前」だと思っていたものに違和感を抱くようになったことが現在の進路に至る大きなきっかけでした。また気づいた問題を掘り下げていく過程は自己とじっくり向き合う機会にもなり、複雑な社会をよりよく生きるためのスキルを身につけることができます。

多くの人が「正しい」と思うことにこそ、大きな問題が潜んでいる場合は多々あります。みなさんが日常の中で感じる小さな違和感について、生活文化学コースでじっくりと向き合ってみませんか。

奈良県庁勤務 岡優佳さん

私は現在、奈良県庁の広報広聴課で、主にテレビやS N Sを通した県政の広報活動を行なっており、県の政策やイベントについて見聞きする機会が多くあります。このような日々の業務を通じて、県庁の業務は多岐に渡り、同じ課題であっても部署によって課題解決に向けたアプローチの仕方は様々である、ということを実感しています。

生活文化学科(現コース)では、ジェンダーや社会学、法律、経済、歴史等、多くの学問分野から、「人々の生活」について学ぶことができます。3回生の後期からは、その中から特に関心を持った分野のゼミに所属し、自分で設定したテーマについて研究します。少人数制のゼミでは、指導教員や他の学生とのディスカッションを通し、自分の考えを深めながら、意見を積極的に発信する力も鍛えられました。今後、どのような業務に携わることになったとしても、生活文化学科で身につけた「社会への眼差し」や「物事に対する柔軟な発想力」は活かすことができると感じています。 

みなさんも生活文化学コースで、これまでに「当然」だと思い見落としていた、生活に潜む課題について、向き合ってみてください。この学科で得ることのできる幅広い学び、そしてそこから見出した興味・関心は、今後みなさんが選択する未来で必ず役に立つと思います。

株式会社学陽書房(出版社)勤務 野田ゆうきさん

卒業論文では排泄物の表象について研究しました。漫画や学習ドリルなど日常の中でポップに消費される排泄物も、実はジェンダーの問題に深く関わっています。

また、修士論文では体臭の表象について研究しました。「くさい」と言われると、他のどんな悪口を言われた時よりも絶望感を抱く理由、そしてそんな私たちに現代の広告が何を提示しているのかを明らかにしました。

現在は出版社で働いています。が、弊社は汚いものとは全く関係がなく、手堅い分野の専門書を刊行している会社です。研究テーマは仕事に直結していませんが、研究の考え方や過程、ゼミを通して学んだ質問の仕方が、日々の仕事に結びついています。

生活文化学コースの特色は、その名の通り、生活に関わる全ての文化を扱えることです。後輩の皆さんにはぜひ、疑問に思うことや気になることを、思いっきり自由に研究してほしいと思います。

社会を生きる中で必要になるのは、多角的な視点を持つことや他分野同士を繋げる力、人の話を聴き、そして考えることです。 進路から「逆算」して選択を狭めず、ご自分のために豊かな経験を積んでいってください。

株式会社伊藤園 勤務 小林那奈子さん

奈良女子大学生活文化学科(現コース)を卒業後、同大学院に進学し、現在は飲料会社にて勤務しております。大学では社会学や農業経済学、ジェンダー学など、幅広い分野の視点から、私たちが過ごしている社会について学びました。大学院ではそれらをより深く学んで議論したり、研究会に参加したりすることで、根拠を明らかにしながら自分の考えを表現する力を身につけられました。さらに農業分野で海外に留学したことも重なり、世の中を多角的に見る視点を養いました。

大学院修了後は飲料会社に就職し、売上分析やキャッシュレス推進に関する業務等、新たな分野での仕事に携わっております。大学・大学院での専攻とは関係ないように見える分野ではありますが、机上で学んだ社会を現実で見ることは興味深く、大学・大学院で学んだ深く考える力や多角的な視点は、仕事で課題にぶつかった際の解決に役立っています。複雑で一筋縄では行かない毎日ですが、そんな毎日を少し俯瞰ながら落ち着いて生き抜く力を、生活文化学コースで身につけてみませんか?

高等学校教諭(東京都) 小林瞳子さん

私は現在、都立高校の教員として家庭科を教えています。家庭科は生活を扱う特別な教科であると私は考えています。その生活というのは人と人との結びつきの中にあります。生徒に、自分の個性にあった人間関係の構築の仕方、社会の参画の仕方を考えさせたいという思いから教員を目指しました。

生活を扱う上で「ジェンダー」の問題は無視できるものではありません。しかしながら、高校生だけでなく、教員の間でさえ多く聞かれるのは、「ジェンダーとはLGBTのこと」という誤解です。日本は「ジェンダー」という捉え方に本当に疎い国だと思います。同時に「平等」ということにも無関心な国だとも思います。ジェンダー平等の本質は、「性によって差別されない」ということ。そしてそれは、「性は人の判断基準にはならない」ということです。関心を持って世の中をよく見ると、まだ問題とも思われていない問題が、そこら中に転がっていることに気が付くのではないでしょうか。そのような気付きを与えることが教員としての使命ではないかと感じています。

縁あって奈良女子大学に入学し、「ジェンダー」という話題がいつも身近にあったことは本当に恵まれていたと思います。また、ジェンダー学のみならず、衣食住に関わる文化、消費生活や法律等、様々な角度から「生活」を捉える視点は家庭科を教える上でなくてはならなかったと思います。後輩の皆さんにも、4年間を通して好きなこと、興味のあること、そして自分の使命となるようなヒントをみつけてほしいと思います。